概要:近年、海外FXユーザーは規制強化と、それに伴う入出金のあり方の変化を強く意識せざるを得ない局面に入っています。金融庁は2025年6月に成立した資金決済法の一部改正において、「クロスボーダー収納代行」に対する新たな規制枠組みを設けました。当記事では、この規制の概要と今後の入出金について、私なりの考えを述べたいと思います。

はじめに
近年、海外FXユーザーは規制強化と、それに伴う入出金のあり方の変化を強く意識せざるを得ない局面に入っています。金融庁は2025年6月に成立した資金決済法の一部改正において、「クロスボーダー収納代行」に対する新たな規制枠組みを設けました。
これによって近い将来、海外FXユーザーのメインルートであった収納代行を介した入出金(国内銀行から海外FX業者への入金・海外FX業者から国内銀行への出金)は高確率で制限される見通しであり、結果的に仮想通貨による入出金が今後の主要な選択肢として注目されています。当記事では、この規制の概要と今後の入出金について、私なりの考えを述べたいと思います。
法改正の成立とその後の動向
2025年6月に成立した資金決済法の一部改正では、国境をまたぐ収納代行(クロスボーダー収納代行)が規制対象になることが明記されました。
この改正は2025年6月13日に公布され、現時点(2026年1月時点)ではまだ施行されていませんが、この半年以内には施行されるはずです(公布から1年以内に施行されるとされているため)。施行後も突然その日を境に資金移動業を取得していない全ての収納代行が機能しなくなる訳では無く、最長半年間の収納代行業者に対する経過措置はありますが、規制が成立している以上環境が大きく変わる可能性が非常に高い事は間違いありません。
ただし、現在金融庁はクロスボーダー収納代行を営んでいる事業者に対して相談窓口を設置しており、「具体的にどのようなビジネスが規制の適用対象となるのか」「適用除外を定める内閣府令はどのような規定になるのか」等の説明・相談を行っているようです。つまり、規制対象外となる事業者や規定の詳細については断定されていない状況であり、わずかな可能性は残されているとも言えます。(とはいえ本当に僅かな希望かとも思いますが)
クロスボーダー収納代行と規制背景
クロスボーダー収納代行とは、簡単に言えば、国内企業や個人の資金を、海外サービス(例えば海外FX業者)への支払い・送金を代行する仕組みです。

(金融庁:第217回国会における金融庁関連法律案の関連資料より抜粋)
従来、この仕組みは資金移動業や銀行免許の登録が不要な送金サービスとして運用されてきました。しかし、金融庁はここ数年の海外オンラインカジノや投資詐欺・マネーロンダリングなどでクロスボーダー収納代行の仕組みが悪用されている事例に注目し、悪用を防止するためにこれを「為替取引」と位置付け、資金移動業としての規制対象とする方向へ舵を切りました。

(金融庁:第217回国会における金融庁関連法律案の関連資料より抜粋)
つまり、2026年6月までに施行されるこの法改正後、クロスボーダー収納代行は原則として資金移動業登録が必要になり、適正な審査・顧客確認が求められることになります。
こう聞くと、資金移動業を取得している収納代行業者を使えばいいと考える方もいるかもしれませんが、資金移動業への登録はそもそも金融業としての体制整備が前提になります(資産・内部管理体制)。加えて、実務上も送金先の違法性・実質的な目的の確認・利用者保護が強く求められるとされており、海外無登録業者への継続的な送金がほぼアウトであることは想像に難くありません。海外FX等無登録業者の間にいる収納代行業者にとっては法改正によって違法性を回避する為に資金移動業の取得を迫られますが、そもそも登録自体のハードルが高く、仮に取得できたとしても資金移動業を取得する事で無登録業者への収納が難しくなるという絶望的な状況と言えるでしょう。
国内銀行の凍結報告、入出金ルートの開拓
海外FXの入出金は、従来「国内銀振込→ 収納代行 → 海外FX業者(出金は逆)」といったルートが一般的でした。しかし、今回の規制により、このような仕組みをそのまま維持することは難しくなりつつあります。各金融機関も独自にリスク回避策を進めており、SNS上の報告によると一部の銀行では、海外FXへの国内銀行入金や海外FXからの国内銀行出金で口座が突然ロックされたり、凍結する事例が報告されています。
現時点(2026年1月)では法改正施行前という点から、これらは必ずしも法的強制ではないものの、一部の銀行がこの法改正に対するコンプライアンス上の不確実性を嫌っている事は想像できます。
もちろんこの事例は、現在国内銀行入出金をしているユーザーの中のごく一部であり、凍結が報告されている銀行にも偏りがありますが、「避けれるリスクは避けるべき」「法改正の施行に備えるべき」という動きが強く、2025年から銀行振込ルートを避けて入出金している海外FXユーザーが増えているのは間違いありません。
現在注目されている仮想通貨入出金
このような現状から、海外FXユーザーの入出金手段として急速に存在感を増しているのが仮想通貨を用いた入出金です。特にUSDTやUSDCといったステーブルコインは、価格変動リスクが比較的抑えられており、資金移動手段としての実用性が高いとされています。その為、多くの海外FX業者が数年前から正式な入出金方法として採用しており、ユーザーは昨今の規制に合わせこれを利用する動きを強めています。
仮想通貨が海外FX入出金の主流になりつつある理由
仮想通貨による入出金の最大の特徴は、銀行や資金移動業者といった国内金融インフラを介さずに資金移動が完結する点にあります。ブロックチェーン上の送金は国境の概念を持たず、特定の国の法制度に直接依存しないため、今回のクロスボーダー収納代行規制のような影響を受けにくい構造になっています。海外FX業者側から見ても、「ユーザーが自ら保有する仮想通貨を送付しているだけ」という整理が可能であり、収納代行に比べて法的説明がしやすい点も採用が進む理由の一つです。
現在利用されている仮想通貨入出金のルート
仮想通貨を使った現行のルートは、国内CEX(国内仮想通貨取引所)で円をなんらかの仮想通貨へ交換し、海外CEX(海外仮想通貨取引所)か個人ウォレットへ送付、USDT等ステーブルコインへ交換後に海外FXへ送金するのが一般的です(出金は逆に流していくだけ)。

個人的に国内CEXから個人ウォレットに流すのか海外CEXに流すのかをどちらが良いと断言する事はしませんが、2025年12月に海外CEX代表格の「Bybit」が日本人向けのサービスを段階的に制限・終了すると発表したことから、最近は海外CEXを経由するより個人ウォレットを経由するルートのメリットを挙げて推奨する声が増えている印象です。私としてもこの流れは理解できるし、今後は個人ウォレットを持つ人が増えると考えています。
ただその一方で、Bybit撤退=海外CEX終了論は論理が少々飛躍気味であり、加えて海外CEX・複数の個人ウォレットを使い分けていると、それぞれ強み・弱みが出てくるので、「CEXよりウォレット」と断言している発信には、間違った手数料体験を元にしていたり、仕組みの理解が行き届いていない解説が多いようには感じています。(この辺はかなり踏み込んだ内容になるのでこの記事では割愛しますが)
百聞は一見に如かずという言葉があるように、私としてはそういった解説を鵜呑みにするのではなく、「十分な知識と理解を持って」ウォレットも海外CEXも触ってみた上で選択すべきだと考えています。
期待されているJPYC EX
ここまで、法改正施行後も国内銀行入出金のルートが使える僅かな可能性は残っている事を示唆しつつも、現実的には終了していく方向が妥当で、仮想通貨を用いたルートが主流へと変化していく事を述べました。
そして今後、この現行の仮想通貨ルートをより便利にする可能性を期待されているのが、JPYCというステーブルコインと、その発行・償還を担うJPYC EXというプラットフォームです。ざっくりとした説明になりますが、JPYCとは日本円と1円=1JPYCで価値が連動しているステーブルコインで、JPYC EXは日本円とJPYCの交換を可能にするサービスになります。JPYC EXはJPYC株式会社によって運営されており、同社は第2種資金移動業を取得しています。
難しい話なので詳細は避けますが、JPYC EXが期待されている理由として押さえておくべきポイントは、JPYCが資金移動業を持つ会社によって発行され、日本の法律に基づき流通しているステーブルコイン(電子決済手段)であり、法律上「暗号資産」には該当しないという立ち位置にある点です。また、JPYC EXが関与するのは、日本円をJPYCとして利用者のウォレットへ送金するまでであり、その後のウォレット上での利用については、JPYC EXや資金移動業としての直接的な管理対象外とも見れる構造を持ってる事も頭に入れておきたい重要な点です。
JPYC EXを使ったルート
注意点がまだまだ多いので現時点では安易に推奨しませんが、すでにJPYC EXを活用した入出金ルートを実際に試すことは可能です。このルートのメリットは、国内CEXを介さずに日本円をブロックチェーン上の資産へ変換できる点にあり、結果として既存の仮想通貨入出金ルートよりもシンプルになることです。
私自身は、リスクを考慮して少額の償還やスワップ利用に留まっているため深い検証まではできていませんが、直近のDEX上のUSDC/JPYCペアのトランザクションを確認する限りでは、100〜200万円程度のスワップであれば大きな問題なく処理されているように見受けられます。
また、ローンチ直後から発行・償還・流動性提供・スワップなどを一通り触ってきた立場からすると、当初は流動性が皆無でスワップレートやスリッページの面から全く実用的とは言えない状況だったのに対し、時間の経過とともにJPYCの流通量が増加し、現在は多くのユーザーの選択肢として検討できる水準になっていると感じています。


JPYCで今後期待されているルートと懸念点
ここからは未来の話になりますが、今後このルートが更に便利になる可能性があるとすれば、海外FX業者側がJPYC入出金に対応する事です。これが現実となれば、途中のスワップが必要なくなり、銀行振込ルートとの手間の差はウォレットから海外FXへ送金する手間だけになります。もちろん最初にウォレット作成、JPYC EXの登録やガス代(※JPYCを送金する際の手数料のようなもの)を準備するハードルはありますが、そのハードルさえ越えてしまえば非常にシンプルな構造となります。シンプルな入出金ルートこそ、既存の海外FXユーザーが最も望んでいる事の1つであり、このルートが確立されれば海外FX業界が大きく衰退する事を防ぐことが出来るかもしれないと考えています。

ただしこれは全てが良い方に流れた場合のシナリオであり、仮にこのルートが確立されたとしても、現実的にその後制限される可能性も否めません。
株式会社JPYC代表の岡部さんのXのポストでは「ウォレット上のDEXへの二次流通は自己責任」というスタンスを徹底していますが、「勧誘活動を行っている海外無登録業者は違法」と発言しています。
ウォレット上のJPYCの利用が自己責任の域にあるように、海外FX業者への送金は資金移動業としての直接的な管理対象外とも見れる構造を持っている事は事実です。ただ、一般論的に金融庁から警告が出ている無登録海外FX業者への入出金ルートとしてJPYC EXがその中継を担う未来が来た場合に、果たしてそれが永続的にそのまま許されるのかというと個人的には少々疑問が残ります。冒頭に書いたこの度の法改正の目的や、資金移動業が金融庁に監督される立場である事を考えた時にみなさんはどう思うでしょうか?
特にJPYC EXにおいては、発行・償還のためにKYC認証、ウォレットアドレスを提出する以上、そのアドレスを起点としたJPYCのトランザクションの流れを(どこから来たJPYCなのか、どこへ送られたのか等)技術的に追跡しやすいと言えるでしょう。
まだ普及していないルートや実現してすらいない未来に対して懸念を持つこと自体あまり意味はないかも知れませんが、現在JPYCに期待しているユーザーはこういった背景を理解し、変化に対応できるように常に情報を追って利用すべきだと私は考えます。
さいごに
ここまで、現在海外FXユーザーが直面している問題についての概要や背景、現在の動き、未来への期待・懸念をまとめました。
海外FX・ステーブルコインを取り巻く環境は、今後も制度・技術の両面で変化し続けます。その中で重要なのは、「誰かの結論」を信じることではなく、自ら調べ、理解し、選択する姿勢だと私は考えています。この記事でも、テーマの性質上、極端に長く・難しくなってしまう部分は一部省略していますし、書かれている内容には事実に加えて私なりの解釈も含まれています。そして何より、私自身も皆さんと同じ、ただの海外FXユーザーであり、この記事はあくまで一個人の考えに過ぎません。
もし昨今の法改正の話題に関して全くの無知のままこの世界に身を置いている人がいるのであれば、まずはこの記事で気になったことを自分で調べるところから始めて、今後の法改正や各所のシステム変更、界隈の流れに振り回されるのではなく、自分の判断軸を持ったトレーダーでいてほしいと思います。
この記事を書いた人
たけだのぶお
Xフォロワー18000人 ネタと真面目の中間管理職
著書:FX ライントレードの教科書
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